「リスクをとることの大事さ(中国におけるVCの実態から その1)」 は大変参考になります。
パートナーシップ制とかの解説はまた今度の機会に。
中国で最も成功を収めているVCといえば、誰もがIDGVCと名前を挙げるだろう。1993年に中国向けの1号ファンドを立ち上げてから現在まで、 その成功経験の数は他のVCを圧倒的に引き離している。IDGVCの中国ポートフォリオには、百度をはじめとして、中国の有力ベンチャー企業がきら星の如 く並んでいる(http://www.idgvc.com/english/company1.htm)。
実際に、このIDGの1号ファンドは36%のIRRを産み出している。中国向けのVC事業で、これだけのIRRを上げるのは奇跡に近いように思える。このような大成功を収め、現在でも中国VC業界で成功の道を突き進んでいるIDGVCであるが、成功の鍵が何であったかを創業者のPatrick J. McGovernに尋ねてみたら、素晴らしいと思う。彼は何と答えるであろうか?もちろん、他のVCがまだ目をつけないうちに中国マーケットに注目した、 というのも大きな理由だろうし、あるいは運が良かった、マーケットの流れを掴んだ、などとも答えるかもしれない。しかし、彼のインタビュー記事を読むと、 以外にも彼は次の一点にこだわっているのである。「ベンチャーキャピタルとして成功するためには、IDGVCは独立したパートナー制を採用した。インテル キャピタルのような会社型VC(いわゆるコーポレイトVC)では、絶対に成功しなかったであろうと。」
驚くべきことに、IDGVCは以前は会社型VCだったのである。1993年に中国向け1号ファンドを創設したときも会社型VCだった。パートナー制 に転換したのは、2000年になってからのことだと言われる。McGovernは、「会社型VCだと、キャピタリストの1年間の収入はせいぜい20万ドル だろう。しかしもしパートナー制を採用したVCのパートナーなら200万ドルの収入だって夢ではない。会社型VCとパートナー制のVC。どちらが成功する かは自明の理ではないのか?」とも雑誌のインタビューで答えている。
何故、このように同じ仕事をして同じ成果を上げながら、会社型VCとパートナー制VCで、収入に大きな差が出てしまうのか?それは、単に会社型VC だとキャピタリストは雇員(サラリーマン)であり、パートナー制VCだと、キャピタリストは老板(経営者)という違いに過ぎない。しかし、この違いは小さ いようで、天と地の差ほど大きい。
資本主義経済下において、同じ成果を上げて給料が異なる。こういう状態は長くは続かない。うまくいかなかった方の組織はいずれは淘汰される。 McGovernは、「自分のIDGVCには、インテルキャピタルのような軍事学校みたくはなってほしくはなかった。」とまで言っているのである。
しかし、パートナー制というのは、言葉を言い換えれば、キャピタリスト自らがリスクをとることであり、リスクをとれば、それだけ自分の収入が増える 可能性が高まる、というのも、これまた資本主義経済の自明の理である。ある意味彼らは当たり前のことを実践しているだけなのかもしれない。ひるがえって考 えるに、今の日本のベンチャーキャピタルの状況はどうだろう?ここは、日本の話をするBlogではないので、日本の話は書かないことにする。
話を戻すと、IDGVCでは中国におけるVC事業の成功の要因として、もう一つは本地化運作(ローカル化)を挙げている。次回には、このローカル化について少し話をしてみたい。