資本政策の”思想”を私になりに書いてみたい。
一般的には、資本政策とは、経営者・経営陣で51%確保するとか、安定株主で何%確保するといった、 政治の世界の派閥や政党の議員の数の発想と同じだ。 単独で過半数でれば、衆議院では法案を可決することができる。過半数に達していない場合は、公明党のような仲間を加えて、数をまとめる。 同じような発想が、ベンチャー企業の資本政策にも反映されている。
一方、誤解していいけないのは、上記のような”資本政策”とValuation (企業価値)との関係である。 必要資金調達額が10億円だとしよう。50%以上維持しようとすると、Pre-money Valuationでは10億円必要だ(Post-Money Valuationで20億円)。
上記の結果、 自分たちの時価総額は、10億円だ というのは可笑しな話だ。可笑しな話なのだが、よくある話なのだ。個人的には、自己中心型・自己満足型の資本政策を呼んでいる。 俺たちはこれだけキープしたい、俺たちはこれだけお金がほしい と言っているにすぎない。 株主に利益を還元する といった株式会社の原則論のようなものはない。
もちろん、上記のような計算をしたが、妥当なValuationになる場合がある。これは許容範囲であり、よく考えているなーと思うことが多い。
Valuationに関して書くと、 第三者機関(会計士等)にValuationの評価を依頼し、その評価をもとにこの時価総額です といってくる会社も多々ある。 Pre-IPOステージの会社ならばわかるが、売上もない会社だったり、アーリーステージの会社がこのような第三者機関に評価を依頼し、自社のValuationを考えるは、これも 自己中心型・自己満足型の資本政策と言える。 今度どうなるかわからない事業計画をもとにDCF等のうんちくつくって、理想的な時価総額をはじき出しているからだ。
アーリーステージの会社で、第三者機関との評価 、とか、51%キープしたいから、といってくる場合は、 その時点で、冷めてします。 まーどうぞ、勝手にがんばってください とまでは言わないが、そんな気分になってしまいます。
何が重要か? リスクに応じたリターンという考え方です。借金は返さないといけないのと同様に、株主には利益を還元するという前提があります。 失敗も当然ながらあるので、現在 リスクがどの程度高いのか、 リターンはどれくらいでるの? どれくらいの確率でるのか?という点がポイントになります。 もちろん、人よって、リスクやリターンに対する考え方が異なります。 われわれのようなVCは、現時点のValuationではなく、リスクはどの程度あり、リターンはどの程度見込めるのか? という点から判断します。 リスクは高いし、リターンも低い といったものは投資に値しない といったことです。
上記は、経営者のシェアは51%以上とか、われわれのシェアは何%以上 といった発想はありません。株式投資の発想です。 よく、シェアはどれくらい希望しますか?という質問がありますが、特にありません という答えになります。
リスクに応じたリターン の考え方に、我々はハンズオンサポートという形で、いかにリスクを下げ、リターンを高めるようなサポートを行っていきます。
まとめになりますが、
・自己中心的・自己満足型でではなく、リスクとリターンをよく理解したうえで、
株主に利益を還元するという発想 を持つ
という点が非常に重要のように思います。 リスクが高く、リターンが低いという投資をしていくと、結果 トータルで損失が大きくなっていきます。そうなると、ベンチャー企業への投資が少なくなります(儲からないところにはお金は回らない)。 株式投資 という考え方を含め、理解しないと、 業界全体にネガティブなインパクトを与えることになるでしょう。