ベンチャー企業はストックオプション制度、持株会制度、業績達成給 など、様々なインセンティブ制度がある。 ただ、有効に使われているケースが少ない。 ”有効”という意味は、①経営者の視点から見るとROI(投資対効果)が高いかどうか。つまり、少ないお金でいかにモチベーションが上がるか? という点 ② 従業員にとってはモチベーションが最大化するという視点。必ずしも金銭的に一番多いということではないというところがポイントだ。
一番のポイントは、 ストックオプション制度 と 持株制度の使い分けだ。
従業員に万遍なくストックオプションを配布する考え方は私は賛成していない。 理由は①一般従業員の場合、ストックオプションの理解が乏しく、メリットを感じてくれないことが多い。契約書一枚である。 ② 1株、2株、5株とか配分のルールに不公平感がある。単位株数に問題がある。 当然ながら2倍の株数だと、2倍の開きがあるが株数の制約がある。③成果とキャピタルゲインのアンバランス。キャピタルゲインを獲るは数年後のことであり、現時点で配分した成果が将来 平等に配分されない とい”時間差”の問題が大きい。 同様に発行する時期によって行使価格がかわるため、入社のタイミングで不公平感がある。 ④ストックオプションプールは通常は顕在株式の10-15%であり、配布数に限界がある。
もちろん、良い点としては、安い給料でも、ストックオプションがあるから、将来的なリターンで頑張る ということだろう。 本当にそうだろうか?
私の考え方は、 ストックオプションはマネジメント層に傾斜配分し、一般従業員は持株会制度 と 業績連動給(ボーナス)を活用すべきだと考えている。
まず、従業員に一定のルールで持株を購入できるようにする。一人あたりの上限を決める必要があるが、 本人が購入するかしないか判断する。 会社への投資であり、ストックオプションと異なり、オーナー意識が芽生える。 また、自分で投資するか、しないかを選択できるため、納得度がある。 ストックオプションの場合はリスクがないため、誰でもIPOしたらキャピタルゲインを得る。持株会の場合は過去に投資しないとリターンはない。リターンの金額は過去の投資判断になる。自分の責任だ。 業績達成給のようなボーナスを併用し、普段の給与でなく、ボーナスのお金で持株株会に投資する といった形が理想だ。 ボーナスを車を買うのも、会社に投資するのも自分の判断だ。 会社としては従業員にボーナスとして支払ったものが、会社の資本として戻ってくる。
そして、マネジメント層にストックオプションを集中すべきだという理由は、マネジメント層ほどストックオプションに対する理解が高い=インセンティブとして効果が高く。 創業期から成長・拡大期にかけて、リクルーティングの武器となる。 優秀な人材を採用したいが、高給である場合が多いが、ストックオプションをうまく活用することができる。マネジメント層だけにオプションプールの配分ができると、優秀な経営チームを数名増やすことが可能になる。
ベンチャー経営の場合は、強いマネジメントチームを作ることが基本だ。ストックオプションはそのためにつかうべきだと思う。
従業員に対しては中長期的なコミットメントがもとめたい。強い組織の条件だ。持株会のように自分で投資し、会社の成長とともに利益を享受できる 方法がよいだろう。
いろいろな経営者から、ストックオプションの配分に関してどうしたらよいのか?という相談を受けるが、 私は上記のように答えている。
ストックオプションの費用計上の問題もあるため、原点に返って持株会制度をしっかりつくっていくという点が重要ではないかと思う。