最近の疑問点としては、 ”ベンチャーキャピタル”から投資を受けると、IPOを目指さないといけないのか? という点です。 IPOはいつですか? とか、IPOしますか?といった質問をするベチャーキャピタルが多い。
IPO って必要なのか? そして、IPOを目指さない会社はベンチャーキャピタルから資金調達を受けるべきではないか? いろいろとあるかと思います。
私の考え方は以下の通りです。
① IPOするかしないかは関係ない。
”ベンチャーキャピタル”とか、”プライベートエクイティ”とかファンドを運営し、投資事業を行っている会社のビジネスモデルはシンプルです。 投資した時点より、高い株価で売却できればビジネスとして成立します。 IPOというのは株式を市場で一般の方々に売却できるようになる状況であり、ファンドの運用期間以内に売却できればよいという話です。
バイアウトファンドの場合は、取引先に事業会社に持分の一部を売却したり、ファンドからファンドに売却したりと、IPOでのEXITはレアなケースです。
したがって、絶対IPOしない と考えている会社でも、銀行借入れではなく、第三者割当増資などで資金調達を行い、一定期間にその持分を売却するできるスキームがあればよいわけです。
シード、アーリーステージの場合は、投資する事業会社はほとんどないわけですし、銀行借入というのも金額は少ないし、個人保証の世界で、リスクマネーではありません。 たとえば、シードステージ投資するベンチャーキャピタルから資金調達を行い、事業を成長した上で、その持分、取引先などに譲渡する とか、 配当とか自社株買い といったことを行うかです。
②持分比率が下がると、経営コントロールされてしまうのか?
普通株式の場合、1株式 =1議決権となります。 増資後の時価総額が5億円の会社の場合、2億円資金調達すると、40%の相当の議決権となります。 やはり、3分の2(特別決議を可決できる数字)をもたないといけないとか、過半数とか、3分の1以上は否決権があるとか、そんなことが、資本政策の定石というのか、常識みたいな話です。
しなしながら、優先株式を活用すると、議決権が1株つき、5個とか、無議決権の優先株式とかを作ることが可能です。
つまり、 「財産としての株式保有比率」と「支配のための株式保有比率」と分離することが可能です。
優先株式は一般的にIPOする前に普通株式に転換されます。 となると上記のようなことは未公開の段階しか効力がないという話ですが、 別にIPOしない会社はいろいろな設計が可能であるということです。
たとえば、極端な例を言うと、5億円必要で、増資前の時価総額を5億円とします。
5+5で増資後の時価総額は10億円です。 この場合、所有の比率は50%となります。
しかし、優先株式で無議決権とすると、創業メンバーは100%の議決権を得ることができます。
その代わり、優先株主は50%の持分を持ちます。そして、優先配当や残余財産などの優先権がつきます。
参加型の優先株式とします。仮に一株100円につき、100円の優先配当。そして超過した分は所有比率で配分するということにします。
事業が成長し、年間の税引後利益が15億円でるような会社になったとしましょう。50%を配当する場合、7.5億円が配当できます。優先株式が上記のように5億円(投資金額と同じ)だけ得てから、残りの2.5億円の持分50%なので、1.25億円合計 6.25億円の配当を得ることになります。
優先配当は、上記のように一株100円につき10円とか200円とか、 また、参加型と非参加型、累積型と非累積型 という選択が可能です。
IPOをしない会社でも年間10億円利益がでていて、毎年、3億円の配当を受け取ることができる優先株式の価値算定はわかりやすいです。たとえば、5年分としても15億円とかの評価可能です。(詳細はDCFなど活用)
③考え方
IPO後の株式売却を実際に経験してみると、個人投資家が売り買いする不安定な市場においては、ベンチャー企業にとって経営に専念できる環境ではありません。特に日本の場合は、IPOを急ぎする傾向があり、早期にIPOしてしまいます。その結果、IPO後にはあまりストックオプションの効果も薄くなるし、 そして、株価が低迷している会社=悪い会社みたいになり、イメージ的によくはありません。信用がつくといいますが、どれくらいなのでしょうか?
また、ベンチャーキャピタルのとっても、市場で売却するとこと、株価を下げる圧力とみなされ、さっさと売ってしまえみたいな話になります。 会社の経営と無関係に株価は乱高下します。
上記のような環境よりかは、しっかり会社を成長させ、利益で株主に還元するというのが正しい道のように感じます。
長期保有かつIPO以外でのEXIT手段の投資スキームが現在の新興企業のとって求められているように感じます。
設計における留意点としては、投資側にとっては①リスクにあったリターンが見込めるかどうか、②流動化(売却)のオプションがあること。 ③長期投資(5-7年)になること。
ベンチャー企業側としては、 ①他の資金調達方法や資金調達先と比べメリットがあるのか? ② 支援などお金以外の価値があるのか? ③議決権に対する考え方は?
A社 と B社という投資会社があります。実際 B社のほうが条件はよいが、支援はA社がよいと思っています。その場合、B社の条件ーA社の条件 を考え、A社の価値はB社と比べ、高いものがある かどうかといった判断になります。 銀行借入れだと、金利など比較するのと同じです。
議決権に関する考え方は前述の通りです。 実はいろいろと考えることができるものだと最近考えております。