最近10億円以上の資金調達も増えてきた。ここ数年でもっとも資金調達活動が活況である。
大型の資金調達と経営戦略
資金調達額の大きさというか「差」は大きい。同じビジネスで同じ1億円を調達し、3億円のビジネスをつくるA社 と 1億円調達して5億円のビジネスをつくるB社があるとする。経営手腕としてはB社のほうが上手に経営しているといえますが、仮にA社が5億円を調達し、3☓5=15億円のビジネスを作った場合、 15億円 VS 5億円 と3倍の開きがある。マーケットシェアで考えると2社しかないとAが75%の圧倒的なシェアになるわけです。
BCGの発明したPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を考えるとわかりやすいです。PPMは「製品ライフサイクルと製品製造現場における経験曲線効果の概念を元にした経営理論」と説明がある通り、製品ライフサイクル=市場成長率、経験曲線効果=相対的マーケットシェアです。 上記のAとBの比較では、AがBに対して3倍のマーケットシェアになります。この差が製造業では製造コストとか調達コストに大きな差になってくる。
スタートアップが競争する市場は「成長率の高い市場」であり、相対的なマーケットシェアを高めることは経営戦略上 重要な考え方にあります。そのための大型の資金調達を行うというは最大の武器になります。
シリコンバレーや中国ではこのような資金調達は日常茶飯事であり、日本で珍しかっただけでした。それがより競争的な市場環境になってきたということを意味します。
VCファンドとしての戦略はどう考えるべきか?
IVP(弊社)としての投資戦略もこのような大型資金調達の時代での投資戦略を考える必要があり、以前のIVPだと単独でアーリーステージで投資するということを考えていたと思いますが、最近ではどちらかという共同投資を好むようになりました。
例えば freeeに関してはIVPも投資していますが、数百億円のファンド規模のDCMさんとの共同投資しておりており、昨年2.7億円の資金調達をしておりますが、調達可能金額を考えるとかなりの金額は調達するはできる投資家の体制である。 同じ The RealRealもIVP単独ではなく、米国の大手のベンチャーキャピタル2社との共同投資を行っており、資金調達力はかなり大きい。 投資する段階から「資金調達力」を意識した投資が非常に重要になります。実際に2010年のグルーポン・ジャパンも立ち上げに成功した要因はIVP単独ではなく、早い段階でグルーポン(US)の資本提携を行った点にあります。逆に相対的に調達金額が少ないところは消えさりました。
単独でさ1億円とか投資していたが、ライバル企業のB社が10億円調達した という状況になると、さすがにいかんともしがたい。一方、勝ち馬が見えてからそれに乗るというこはアーリーステージのVCファンドの選択肢としてはない。
現在、考えると共同リードで投資するとか、そういった投資体制が望ましい。実際にfreeeはDCMさん、ワンオブゼムのグロービスさんとの共同投資であるか、ミューズコーのITVさんとの共同投資は非常に価値のある体制であると考えています。
スタートアップの資金調達における注意点
スタートアップの注意点としては、もし同じ市場に複数社いる場合のときに資金調達に関してはより戦略的に考えるべきであると言えます。2−3億円の資金調達は以前までは大きな資金調達でありましたが、現在10億円とか資金調達の時代になっています。
相対的な資金調達の規模が今まで以上に重要になっている。3億円でも12億円集めている会社からすると4分の1にすぎない。人材の採用にしても広告投下にしても金額面で4倍の差になる。
一方、調達金額で負けていても戦い方は実はあります。「柔道ストラテジー」という本が面白いです。古い本ですがおすすめです。