iFund とiPhone のビジネスに関して考察してみたい。
以下、図を作成してみるとわかりやすい。 AppleはiPhone の販売収入と、キャリアとのリベニューシェア、そしてAppStore のリベニューシェアといったことがビジネスモデルとなる。そのため、AppStoreの販売増加に加え、アプリケーションの充実化によってさらにiPhone自体の販売数を伸ばすことがAppleにとって大きなビジネスだ。
通常の日本の事業会社、例えばNTTドコモであればドコモ・ドット・コム
といったベンチャー投資会社を自社で持ち、取引先などに投資を行っていく。
なぜ、Apple はAppleとは関係のない外部のベンチャーキャピタル、そして世界トップクラスのベンチャーキャピタルであるKPCBと組むのだろうか? インフィニティ・ベンチャーズ(弊社)の共同代表パートナーの田中章雄さんもAdobeの投資ディレクターとして戦略投資を担当していました。Flash やPDFといったAdobeの製品と関連がある投資を行ってきました。
KPCBは世界トップクラスのVCファームであり、過去 サンマイクロシステムズ、Compaq, Amazon.com, Netscape, Google といった業界を代表する企業に投資し、支援してきた会社でう。 成功報酬はベンチャーキャピタル業界はキャピタルゲインの20%ですが、KPCBは35%といわれます。 投資担当者の報酬も投資先の成功をすると巨額な利益を得ることができます。
KPCBにとってiFundの目的はイノベーティブなiPhone関連のアプリケーション企業を創造し(支援し)、Netscapeなどのような大きなインパクトのある投資を行っていくということになります。
これは日本にありがちな、リターンをあまり求めず、取引先に投資するような投資を目的としていないということになります。
KPCBの力を活用し、iFundを運用することによって、AppleはiPhone/iPod Touch 上の新しい「キラー・アプリケーション」の創造に注力している ということがいえるでしょう。以下の図にすると理解が深まると思います。たとえばMixi がiPhone に対応したということがありましたが、これはイノーベイティブなことでしょうか? 既存のサービスがiPhoneに対応したまでのことです。 日本で一番大きなソーシャルネットワーキングサービスがiPhoneに対応することはiPhoneにとっては大きな意味がありますが、このように既存のサービスをiPhoneに対応してもらうことはDeveloper Programやサポートの領域ということになります。
既存の差サービスをiPhone対応するというこはお金(コスト)というより、Developer Programの充実であったり、サポートといった人的な支援が重要になります。
一方、イノベーティブな製品・サービスを生み出すには世界トップクラスのベンチャーキャピタルファームの力 と 約100億円の資金を投下する必要があると考えたのでしょう。
iPhoneは話題や注目を集めていることは事実ですが、他の携帯電話やブラックベリーなど比べると後発であることは事実です。 このようにイノベーティブなアプリケーションを開発を促進し、「キラー・アプリケーション」をどれだけ創造できるのかが、非常に重要な競争優位の源泉となるということを考えてのことでしょう。
上記の図で、「Risk Money 」と書いていますが、日本の事業会社の投資はアーリーステージの投資というよりかは、事業が成長し、取引関係を強化するといったことを目的としては「Relationship Money(Capital)」です。 投資金額も一般的には大きくありません。
日本において成功事例と入れるのがグリーとKDDIとの資本提携だと思います。当時おもにPC向けだったGREEのサービスをモバイルに一大転換して、現在600万ユーザーを超える人気サービスとなっています。 モバイル版のGREEと PC版のGREEはまったく異なっているといってよいほどのサービスです。
プラットフォーム側の戦略を考えるうえで非常に示唆に富む事例であり、今後も重要な考え方となっていくでしょう。