最近のVCの投資は活発だ。 普通株式で投資契約もほとんどない条項でマイナー出資をするケース増えている というか主流ではないか。 このような投資でどういった問題が発生するのか? といったところを解説しながら、未公開株式の投資の実務のさわり をまとめてみたい。
ベンチャー企業の資金調達の例を解説する。
- 創業メンバーが1000万円出資し、会社を設立した。
- 会社は順調に成長し、売上 5億円 経常利益が5000万円まで成長した。
- さらに成長するため、VCからの資金調達を考えた。5億円調達したい。
- あるVCが株価算定をしたところ、経常利益の40倍くらいで20億円
という時価総額だった。
- そして、増資前時価総額を20億円とし、5億円の資金調達を実行した。
つまり、25億円分の5億円なので20%相当を新規発行した。
- もとともと創業メンバーが出資した1000万円は20億円の価値となった。
-株式の種類は普通株式で、投資契約は形式上のものを結んだ。
上記は普通の話なのですが、どういうことが起こりうるのか?
- 株式総会の特別決議(3分の2以上)で、清算や解散が可能。
- 増資した直後に やっぱり会社やめます ということになった。20%の持分の
VCは反対はするものの、決議された
- 増資した5億円を加え、資本のところに6億円あったとすると、創業メンバー
は80%を保有するため、4.8億円の分配を受ける。つまり、1000万円
だったものが4.8億円(48倍)になるのである。
- 一方、5億円出資したVCは、1.2億円になってしまった。 投資した直後に
であるのにだ。 損害賠償だ!というかもしれないが、株式投資にはリスク
はつきものである。
もちろん、増資した後にすぐに清算する といったケースはほとんどないと思うが、
実際は可能である。
上記の防ぐためにはどんなことが必要か? 単純にシェアとして、3分の1以上を持つということもあるが、 投資契約の内容の中に、特別決議の項目に関する事前承認の項目を盛り込むことが必須である。 特別決議は、第三者割当増資であったり、清算であったり、と非常に重要な項目が含まれる。 また、営業譲渡など、重要資産の譲渡や配当などの承認の項目を加える。 契約に違反する損害賠償ができるといった内容だ。
ベンチャーキャピタルは上記のようないきなり解散される といったリスクをとるのではなく、あくまで市場だったり、開発リスク などのリスクをとるという姿勢だ。リスクをコントロールできるところは徹底的に防いでいく必要がある。 そもそもリスクが高い投資であるため、事前に防ぐことができる項目をしっかりやらないといけないのである。
投資契約のほか、優先株式での投資がある。 残余財産分与の優先権や優先配当 という項目がある。 最初のケースでは、VCは1.2億円しか戻ってこないことになるが、優先株式で投資している場合、残余財産の優先権があった場合、5億円の投資金額を保護することできる。 優先株式は普通株式より優先的に分配されるという項目のためだ。
優先配当も同じだ。
以上のような話は、プライペートエイクイティ投資の教科書に必ず出てくるような条項だ。
我々の投資契約の中には、上記のような重要事項の事前承認以外にも社外取締役1名の選任とか、 粉飾決算していないよね (情報が正しいかどうか) とか、含まれている。
投資することだけ考えると、 普通株式で投資契約もない、株価も高い といった甘い条件で提示するのが良い。 ベンチャー企業側にとっては得であるから、投資を受け入れようということになる。
しかし、VCの仕事は事業創造といったミッションもあるが、リターンを出すのが仕事である。リスクを最小化し、企業価値最大化を実現する といったことが本来の仕事である。リスクの最小化は、投資契約のように投資前に事前に想定されるリスクを防ぐこと、そして、投資後は市場や開発、マネジメントのリスクは経営チームといっしょになって、解決していき、企業価値最大化を実現する ということである。