本日 2月28日付けでインタースコープ社の社外取締役を退任することになった。
これはヤフー社に対して弊社の運用するファンドの持分を売却に伴ったものだ。
2002年8月に投資実行し、社外取締役に就任し、2007年2月まで会社に一生にとっては短い期間ではありますが、いろいろとお世話になりました。経営陣・従業員・株主・取引先などなど関係者の皆様は大変お世話になりました。 「投資」という仕事だけではなく、人間としていろいろ学ぶことが多く、成長することできました。本当にありがとうございました。
まず、投資の実務の点から振り返ってみたい。 まず、投資の経緯を書きたい。
私は2001年6月に現在の会社に転職した。2002年8月当時は28歳になったばかりだった。ちなみにちょうと8月に新婚旅行にいっていた。新婚旅行(フランス)にいっていたとき、投資契約の文言チェックなど仕事をしていたことを思い出す。
案件の発掘(ディールソーシング)は弊社の代表の堀 と 当時 CEOであった平石さんがたまたまどこかのパネルディスカッションでいっしょだったということと、私の妻の友人のラソナの岡村さん(平石さんは現在ラソナ社の社外取締役でもある)のご紹介を頂いて、お会いしたのがきっかけだ。 2つの出来事はほぼ同じタイミングだった。
ちょうど増資をしていることなので、堀と私とでお話伺ったのが最初だ。 2002年というなはネットバブルが崩壊し、現在ほど資金調達が楽な時代ではなかった。インタースコープ社も資金調達活動も長期化していた。 いろいろとあったていたいろいろ伸びていたというのであった。
インターネットリサーチ市場は立ち上がりつつあった。当時からマクロミル、インフォプラント、インタースコープという3社は業界内でも伸びている会社としてあった。売上規模も同程度だった。 マクロミル社とインフォプラント社は低価格のネットリサーチ会社としてガチンコの競争環境にあり、インタースコープは質の高い調査を得意としていた。
われわれが投資したラウンドはシリーズBという2回の資金調達だ。シリーズA(2000年8月)はジャフコさん、日本アジア投資さんが共同リードだった。 シリーズBはリードインベスターは弊社、そして日本アジア投資が追加投資を行い、あと2社の合計4社 約1.75億円完了した。そのうち、われわれは1億円投資した。
(このときの模様は平石さんのインタビュー記事を参照)
既存株主であったジャフコさんを含め、多くのVCが投資を検討したが、投資実行は4社だけだった。 日本アジア投資さんも稟議を通すのが大変だったという聞いていた。そこから新家さんとの付き合いがはじまった。
投資直後はなかなか大変だった。 資金調達活動が長期化していたため、営業活動より資金調達活動に時間を多くかけていたこともあり、営業力が低下していたのだ。また、経営体制の点などいろいろと課題があり、夜中にインタースコープ社にしばしばミーティングに参加した(インタースコープは池尻大橋にあり、当時 私は中目黒に住んでいたため、ご近所ということでよく呼び出された(笑))。
資金繰りが厳しい時期もあったが、なんとか乗り越え、成長軌道にのったと実感したのが2003年3月だった。 成長軌道に乗ったが、逆にさらに資金が必要になった。しかし、営業力低下の結果 2003年3月期の業績はよくなかった。 2002年8月の増資のときより、厳しい資金調達活動が想定され、弊社社内でもいろいろ激論があったが、2003年8月に2億円の追加投資を実行した。 他に投資する会社はいなかった。
その後、業績は順調に推移した。 2004年2月には同業他社のマクロミル社が東証マザースに上場。またインフォプラント社もベルシステム24と大型の資本業務提携というニュースがあった。 大きな動きの中で、インタースコープ社もデジタルガレージ社との業務提携に踏み切った。
その後、2005年7月に創業者の平石さん、山川さんが代表を退任し、田部さんが社長に就任した。また、2006年3月には平石さんが取締役も退任した。
そして今回のヤフー社との話につながる。
私の果たした大きな仕事といればまず、2002年8月のシリーズBのリードインベスターとして資金調達活動をまとめた点だ。 これがなかったら、会社は倒産していた。
そして、その後の経営体制の構築など、厳しい時期をいっしょに乗り越えるこができ、そして2003年8月に2億円の追加投資を多くの反対があった実行した点である。 特に2003年8月の追加投資は大きかった。 2004年4月のデジタルガレージ社の資本参加により、立場が変わって、 距離が遠くなった。 私の最後の大きな仕事は様々な選択肢の中、ヤフー社とのディールのまとめるサポートができたことだろう。これはNILSでインプラント大谷さんとの関係が近いなどの今までの活動が生きたものだった。
投資した時より、売上高は4倍くらいになった。従業員数も4-5倍だろう。今では話したことがない人が多い。
投資の成果としてはどうだったか? IRRは約50%だ。 一方、大変残念ではあったが、大株主であるデジタルガレージ社は投資した時点の半分程度の価格で売却することになった。(ネットDeアナリストさんが詳しく解説)
私はインタースコープ社から多くのことを学んだ。また、学ぶだけでなく、しっかりファンドの投資家に対し、リターンを還元することができた。 今の自分だったら、もっといろいろとできただろうに・・・と思うことがある。28歳の経験のない若者だった自分のことを考えると、平石さんも山川さん も社外取締役として信頼いただき、ここまで継続することができた。
これからは株主や取締役という関係ではないが、今後とも関係は続く。 ベンチャーキャピタルはリスクマネーを提供する3-5年という短期的な資金の提供者だ。 リターンは投資家に還元され、そのお金がまたベンチャー投資に回るのだ。 ベンチャー投資はハイリスクである。ハイリターンを返すことで、我々も仕事を継続できるし、また新しいベンチャー企業へ資金が流入する。
マネーゲームのように高いValuation投資する会社が多くなってきた。 これはハイリターンのほうに目がいっているのだ。
ベンチャーキャピタルはあくまで「リスクマネー」であり、リスクの代わりにリターンがあるのだ。逆ではない。
リターンは投資家に還元されるが、この経験は我々自身に還元され、他の投資先にとってはノウハウになる。 お金と経験のサイクルをまわすのが我々の仕事だ。
仕事はすべてがうまくいくわけではないし、厳しい局面を迎えることのがほうが多い。このような機会を頂き、大変感謝している。