電車の中でいろいろと考えていたことを書きたいと思います。
1 Pre-IPO投資
ベンチャー(未公開)投資の場合は、通常 シリーズA、B、C といった何回の増資のラウンドに分かれます。 ”シリーズA” という表現は、日本語だと「A種優先株式」といった感じになります。つまり、米国などでは権利などがいろいろ設定できる優先株式(Prefered Stock)での投資が常識(それしかない)です。 普通株式(Common Stock) でガンガン投資しているのは日本くらいでしょうか。
通常 Pre-IPO の段階、 1年以内に上場する会社が取引先(金融機関・事業会社)などに割当をするケースが多く、 日本の場合は「普通株」になります。
2 なぜ 1年前の第三者割当増資 と 公募価格に差があるのか?
ウェブドゥジャパン、AQインタラクティブの2社とも3月決算の会社です。 2007年2月のIPOということは、2006年3月期を基準期とし、 2007年3月期の上半期(4-9月)の業績の進捗度合いを見てから、申請した という内容です。
IPOのタイミングは主幹事証券は2006年3月時点でスケジュールはわかっており、予算と実績の業績をしっかり達成すればIPOという流れです。 2007年3月期の予算は2006年3月までには作成されており、また予定通りIPOするということは業績もオントラック(順調)だったことがわかります。
2社のIPOの公募価格のプライシングは、2007年3月期の業績の予想数値 と 業界の平均PERといった数字を参考に決めます。 つまり、 2006年3月に未公開の段階で増資した投資会社 と IPOの公募価格の業績のデータは 2007年3月期の予想数字はわかっているということになります。 しかし、リスクという意味では1年前に投資した会社のほうが高いわけです。実際 達成するかどうかわからないわけですから。 そして現在 2007年3月期の数字がほぼ見えているときの公募価格 がなぜ1年前の第三者割当増資の価格が安いのでしょうか?
また、基準期に新規発行した株式は会社法では、自動的に6ヶ月間の譲渡制限(ロックアップ)がかかります。 ご存知のとおり、IPO直後は株価が乱高下しますが、6ヶ月たったら他のIPO銘柄に興味がうつり、DeNAやミクシイといった代表的銘柄ではいと忘れ去れてしまうということにあります。
この段階での投資は業績のリスクよりも、 株式市場のリスク を大きくとっていることになります。 投資した時価総額が割安ならばよいのですが、割高の場合は業績は順調であるが、投資しては儲からない・・・ということが起きるのです。
3 示唆
私はこのような事象を見て、2つのポイントがあります。 ①Pre-IPO ファイナンスのプライシングとストラクチャリング。 ②上場する意味です。
②のほうから説明すると、 1年前の第三者割当増資のほうが株価が高い、つまり未公開段階で時価総額が高くても投資したい会社が存在するのに、IPOして低い株価で資金調達する意味があるのか?という点です。 IPOした場合、ディスクロージャーなどコスト・手間がかかります。 10-20億円ファイナンスしたいながら、現在は公募増資でないほうが有利なのではないか? という点です。(ただし、2社の例のように1年以内にIPOがほぼ見えているから高い時価総額を正当化した ということになるので、前提が崩れると変わるかも)
米国の未公開企業だとBrightcoveのように60億円増資しました!といったことがあります。時価総額も250億円とか規模が違います。 IPOすると4半期ベースの業績開示もあり、雑音が多くなります。 日本の新興市場は事実上2000年前後から本格化し、数年間で多くの学びを得たと思います。
いろいろな事例も多く、米国型のファイナンスに近づいていくのではないか?と思っています。
①にPre-IPOファイナンスのプライシングやストクチャリングがポイントです。公開株だとロング・ショートとかいろいろな売り・買いの方法がありますが、 未公開だと第三者割当増資、それも普通株 といったものになります。 投資するかしない という判断です。
ここもは転換社債や優先株式などもっとストラクチャリングを工夫すべきところです。
読んでいるかは、 え どうやってやるの? という人が多いと思いますが、投資の現場
では大半がそうなのです。 結局は高い時価総額で普通株で投資して頂くほうが発行会社にとっても楽だし、よいという判断になります。
Pre-IPOの場合は、ストラクチャリングを考えても、結局 採用されないことが多いので、
割安だったら投資する という判断以外にないように思います。