業界動向を調べるときに参考にしているのは他のベンチャーキャピタルの投資動向やどのパートナーがどの案件を投資しているのか? といった点を勉強しています。 私の場合は特にBenchmark Capital の動向を見ています。 前回シリコンバレーでにいったときにパートナー全員と会う機会があったこともあって、親近感を勝手に持つようになりました。 特に凄いなと思うのはPeter Fenton というパートナーです。年齢的にも同じくらい(35-35歳)で、特にオープンソース関連の投資は大成功をおさめています。 最近ではTwitter とか Friendfeed といったネット系案件に投資しています。
彼のプレゼン資料がアップロードされています。
特に参考になるのは、伝統的にベンチャーファイナンスの考え方と新しい考え方の違いです。
まず以下のスライドは”Farm Raised"という伝統的なベンチャーファイナンスのモデルです。直訳すると「農場で飼育された」といった意味ですが、 起業のアイデアを考え、リサーチをする段階から、 よし!いけそうだ ということでR&D にはいり、製品を出荷するといった流れ。ステージごとに資金調達を行い、事業を拡大していくというモデルです。
一方、”Free Range" というモデルは直訳すると「放し飼い」という意味で、どれくらい時間がかかるかわからないが、少ない資金で実験するフェーズがあり、浸透する兆しみえるところで成長資金(シリーズAのファイナンス)を行うといったモデルです。 実際にビジネスモデルか定義され、実証されている段階のValuation (時価総額)は高くなる といった図です。
グリーのケースは上記の図とはちょっと違いますが、同じような考え方になります。
「GREE」というサービスは現在 代表取締役の田中良和さんが個人で開始したサービスでした。コストも安く抑え、一人で運営ということを会社設立する2004年12月まで10ヵ月程度かかっています。 そのときはSNSなんて「ビジネスモデルがない」と言われたものでした。ミクシイなどの成長もあり、SNSの浸透が始まるときでした。そのタイミングでの投資ということで1億円の投資というのが2005年7月です。 シリーズAの投資です。
グリーの場合は、ユーザーは投資してから1年で2.5倍以上になって、悪い数字ではなかったですが、KDDI との資本提携によって、モバイルサービスにフォーカスし、成長が加速。そしてゲームなどのデジタルアイテム課金のビジネスモデルを確立し、2008年12月にIPO ということになります。
図のシリーズAにあたるところは、グリーの場合は2回あったといえます。グロービスからの1億円の投資、そしてKDDI の3.6億円の投資です。黒字化し、モデルが見えた段階でリスクは大幅に減少しました。 グリーの場合も結局、ベンチャーキャピタルとして投資できたのは2005年7月の最初の段階だけでした。 Peter も このシリーズA に投資するのがベスト ということだと思います。
「放し飼い」という表現は的確な表現だなと思います。 きっちりマイルストーンを設定し、評価するモデルではなく、 「放し飼い」です。 実際にグリーのときにローコスト経営という特徴もあり、細かいマイルストーンを設定するといったことはなく、よいサービスを作るとか、よい人材を採用する といったことに専念できたのが重要なポイントだったと思います。
そして、サービスが軌道に乗ると急成長する というのがコンシューマー向けのネット・モバイルサービスの特徴ではないでしょうか。
いろいろと勉強になります。