シード・アクセラレーターについていろいろ書いていますが、実際のIVPのベンチャーキャピタルとしての投資戦略とシード・アクセラレーターとしての側面についてまとめてみたいと思います。
繰り返しになりますが、4月6日に開催されたアマゾン リーンクラウド レボリューションセミナーに「シード・アクセラレーター」として投資先が参加しました。
AWS Lean Cloud via kwout
インフィニティ・ベンチャーズ(以下、IVP)は一般的な「ベンチャーキャピタル」ではあるのですが、時代の流れから「シード・アクセラレーター」の側面をもつミックスした投資会社になっています。 この自体の流れというのは、リーン・スタートアップ(Lean Startup)です。
創業段階において、すくない資金でまずははじめてみよう、そして改善していこう というモデルではなく、IVPは、1〜2億円を初期段階に投資し、まずはじめてみよう、そして改善していこう というモデルになっています。
当時のグルーポン・ジャパン(当時はクーポッド)は事業の立ち上げの段階で2億円の投資を行なっていますが、意思決定するのに必要なのは”グルーポン”事業の概要 と 簡単なエクセル1枚のシートでまとめたKPIなどの事業プランです。 当時 数十社という参入企業があり、とりあえずやってみるという会社は多かったとおもいますが、初期段階から2億円かけて数十名体制で勝負をかける。そして課題があったら日々改善をしていくといったモデルでした。その後、グルーポン(US)から出資を受け、現在に至ります。
この投資モデルは共同創業型というJVに近い投資を行なっています。創業段階において一番のチャレンジはサービスが市場で浸透するのか?といったこともありますが、それよりチーム・組織作りが重要になります。 グルーポン事業に関しては欧米などでは既に実証されているビジネスであることもあり、決定的な差がつくのはチーム・組織作り 、そして資金量です。 この重要性を理解した上での初期段階の投資を行っていました。
次の事例としては、クラシファイドサイトのジモティーです。
会社の資本金の金額をご覧いただけるとわかりますが、IVPは約1.5億円の投資を行なっています。2011年2月に設立した会社です。リーン・スタートアップのようにまずはローンチをしてみていろいろとテストしたり、中国の成功事例を学んだり などして、11月にサイトをリニューアルし、現在順調に成長しています。 ピボットといわれる大きな方向転換を行なったわけです。10月には代表の加藤さんが参画し、現在の組織体制になっています。
リニューアル後はユーザー数は右肩上がりに成長しています。規模間も最近の「ソーシャル」なんとかサービスが何万ダウンロード達成 といった発表がありますが、既に「桁」が違うレベルに成長してきています。
これは結局のところの資金量の差がトライ&エラーのサイクルが違うということになります。例えば人数が2名のところと10名のところでは10名ほうが一人あたりの平均の能力が高くないかもしれませんが、リソースの違いは明らかです。
リーン・スタートアップの時代では、小資本で始めることができ、改善していくといったことに注目されていますが、ポイントは改善するというPDCAサイクルのところであり、そのスピードとか精度をいかに高めていくか?といった点で資本力の差=組織体制の差 が大きくでるのです。
リーン・スタートアップはプロセスの話がでてきますが、しっかりPDCAのサイクルを回すことができる経験値が重要になるわけであり、その経験というのはジモティーの場合は加藤さんはリクルートでの事業運営の経験を10年有している といった点、 他投資先のエムラボ、スマートエデュケーション、ワンオブゼムも同様に経験値豊富なマネジメントが経営しているという点がIVPの投資先の最大の特徴だと思っています。
「1〜3億円の初期の資本」、「5〜10年のネットでの事業経験(サービス開発の責任者などを経験)」、そしてAWS(クラウド)と「リーン・スタートアップ」のマネジメント手法を武器に成長する分野におもいっきり勝負をかける といったことがIVPのシード・アクセラレーターとしての戦略です。
そのためお金をかけるところの優先順位が違います。例えばIVPは独立個人のパートナーシップ制のVCであり大手企業ではなく、自分たちのオフィスもなければ、投資先のために提供できるオフィスはありません。 どこにお金を使っているのか?といったのはIVSなどの業界動向を把握し、流れを生み出す場をつくること、人的なネットワークを創るという点です。一般的なシード・アクセラレーターとは投資戦略が異なるわけですから、リソースを投下していることが異なるのは当然です。
初期段階に1〜3億円を投資するためにはファンド規模もそれなりにないといけませんので、しっかり資金調達活動を日々行なっていること。2008年からずっと継続しており、資金調達活動をやっていないときはないくらいです。 短期的に目に見えた成果を出すことがとても重要です。 一般的にベンチャーキャピタルは投資回収まで5−8年かかるとか、10社に1社成功すればよい といった時代がありましたが、そんな時代は過去の話なのです。
最後に私自身の時間の使い方としては、必ずしも起業家(既に起業している人)ばかりに会っているわけではありません。責任をもってネットサービスを統括している人のような方にできるだけ時間を投下しています。これは「採用活動」の一貫でもありますが、実際にどのような人材が良いのか?といった点はいろいろと会って話してみてわかるものです。
試行錯誤をしていますが、最近の方法はオーソドックスにディナーなど食事をするといったことです。だいたい複数名で食事をすることが多く、参加する方それぞれが刺激になる、面白い場をアレンジすることです。
いくつかトライアルをしていることがあるのですが、活動の幅を広げるように努力したいと考えております。
(続く)