仕事として10年以上 「ベンチャーキャピタル」の仕事をしていますが、最近は投資先の資金調達活動の支援に力をいれています。前職のグロービス・キャピタル・パートナーズのときは200億円とか大きなファンド規模だったこともあり、単独で大きく投資できることもありあまり重要性を感じていませんでした。 独立してVCファンドを立ち上げると単独での資金は少なく、そして事業も大きなものを目指そうとすると投資先1社で累計10億円以上は資金調達をしないとなかなか大きなものを目指すことはできません。
最初のシリーズAの資金調達は弊社が投資するにしてもシリーズBは他の投資家も含め資金調達を行うことがとても重要となり、ここ1年は特に力を入れてきました。結果として投資先のワンオブゼムやスマートエデュケーションといった会社がしっかり資金調達ができました。
シリーズAの投資家として、シリーズBに向けてどのようなことをしないといけないか?を考えました。
1. 足元の赤字か黒字はどれほど重要か?
シリーズBの段階では資金調達が必要ということなのでまだ赤字というケースがほとんどです。黒字化を急ぐと広告費などの先行投資をおさえることになるため大きなビジネスにはなりません。
ベンチャー投資家としては大きなビジネス作ることが目標であるため、優先順位としては「黒字」は高くはありません。 しばらく赤字でも大きなビジネスを作るための資金調達である。それがシリーズBのポイントです。
2. シリーズBでは何が重要か?
シリーズBの資金調達になると会社によって差がありますが日本の場合 3〜10億円の資金調達をすることになります。 月次で2000万円くらいの赤字=先行投資をしている段階だと最低でも3〜5億円は必要ということになります。
ここでの資金調達のポイントは
- プロダクトの完成度が高く、市場性が見えること
- 経営チームがしっかり組成されていること。
- ビジネスモデルがしっかり確立されていること
の3つです。シリーズAで資金調達をした資金でこの1〜3をしっかり固めることがとても重要になるわけです。
1はわかりやすいですが2に関しては創業者1-2名だったところから他の経営幹部も含め採用を行い5名くらいの経営チームになっている。チーム経営がしっかりできるかどうか?が重要になります。
3に関してですが、「ビジネスモデルの確立」というところの完成度の良し悪しがシリーズBのValuationに跳ね返ってくるものです。つまり、5億円投資したら、現在のKPIからするとこうなる ということが誰もが想像できるレベルまで達するということになります。
ユーザー獲得の方法、獲得コスト、課金率とかLTVとかEコマースにしてもゲームにしてそれぞれ重要な指標があり、その良し悪しを判断することができます。
すべて完璧ということは少なく、どかが課題になっていることがほとんどです。課題の場合はその課題への対策も含め、しっかり説明していくというのがシリーズBの資金調達です。
3. Valuationはどう決まるのか?
売上高が月6000万円の会社と月1000万円の会社の時価総額は全社のほうが6倍高い というわけではないというのがスタートアップの資金調達です。
投資先の資金調達を数社担当すると、月の売上高が大きいからといって、資金調達が楽なわけではなく、逆に小さいところが上記の1〜3の完成度が高く時価総額も非常に高くなるというケースがあります。
つまり重要なのは上記1〜3のように「将来性」です。足元の売上が大きくても将来性がないものには資金が集まらない。現在の売上とか数字は将来性を示すための実験データにすぎないということです。その実験データとは、このビジネスに10億円投資すると、こんな大きなビジネスになるということを示すためのデータになります。
将来 時価総額1000億円になるビジネスか、50億円になるビジネスか、そういったことが重要なわけです。もちろん上場している会社でなんでその会社が時価総額1000億円あるのか?といった会社もあったりしますが、市況とかに左右されない大きなビジネスを作るという考え方が重要です。
4. 投資家は数多く会うこと と タイミングを揃える
シリーズBの資金調達活動をする上で数多くの投資家と会うことおすすめしています。理由な単純に「将来性」に関してはいろいろな人・投資家で見方がわかれるためです。 Aという投資家は例えばスマートエデュケーションの場合 知育アプリなんてそんな大きくない と思うかもしれませが、Bという投資会社は高く評価する といったことです。 最初に数社当たって非常に感触がよい場合はさらに回るもっと感触がよいかもしれません。もともと5億円の調達のところが2倍の10億円になるかもしれないのです。
シリーズAの段階では経営チームを組成したり、プロダクトの完成度を高めたり起業家の時間をつかう必要がありますが、シリーズBの段階では完成度が高くなっていることから10億円とか資金調達をすることで市場で確固たるポジションを作ることが目標になります。ライバル企業と比べてしっかりとしたポジションを作ることができるか? そのためには資金調達は非常に重要な活動です。
資金調達は単にダラダラ会っても意味がありません。10億円の資金調達をすると決めたら、一定期間でロードショーを行い、同じタイミングで投資家を集めることが重要になります。これは本当に良い会社であれば誰もが投資したいと思うわけですが、早く意思決定したいとか、投資家の間で競争があるためです。
これはIPOにおいてロードショーがあるようにスタートアップも同じことをすべきです。
5. シリーズAでは何をすべきか?
シリーズBの資金調達のおいて重要なポイントとなっているのはシリーズAではまだまだの状態です。プロダクトは完成していないとか、経営チームが創業者だけとか、ビジネスモデルなんてものはない とかです。
結局 「将来性」「可能性」あるところが資金調達ができる。このプロダクトだったら、ビジネスモデルはこんなモデルになるかもしれないから筋が良さそうだ とか、この経営チームであればプロダクトもしっかり作れるし、ビジネスモデルもしっかり作れるそうだ といった「仮説」によって投資判断するのです。
投資家としても起業家としてもシリーズBの前までに「仮説」だったことをしっかり実績で示すことが重要になります。
IVPの場合は、この経営者・チームでればしっかりとしたプロダクトも作れるし、ビジネスもしっかり作れるはずであるというところを重視してシリーズAで投資することがほとんとです。そのため経営者・経営チームはサイバーエージェントとかGoogleとかで実績があるといった経営チームを好みます。
プロダクトを出し、そのKPIを見ながら改善をして数字を伸ばしていく。PR活動も支援していく。そしてシリーズBの資金調達を支援するといった支援をする。
(続)