ICCカンファレンスの運営チーム作りで心がけていることことをまとめました。
ICCカンファレンスの運営を通じて社会に役に立つ人材を育成・発掘する
まず、ICCカンファレンスの運営チームはボランティアチームを中心に運営されています。
カンファレンスの運営は通常はイベント運営会社に運営を委託するのが一般的な運営方法だと思います。それを自前でボランティアチームを中心に運営するのは理由があります。それは運営を通じて社会に役立つ人材を育成・発掘することです。参加するだけでも多くのことを学ぶことができるのですが、運営に参画することで成長の「きっかけ」になるような場になるからです。2004年から11年に渡ってカンファレンス企画・運営をしていて価値のある活動であると考えています。
単にイベントを運営すれば良いのではなく、人材の育成や発掘の場にならなければならない。私は強い信念をもって取り組んでいます。
ICCカンファレンスのコンセプトに強く共感する人材を集める
人材の育成や発掘の場といってICCカンファレンスをしっかり運営することが必須条件です。そのためICCカンファレンスのコンセプトに共感し、このコンセプトを実現したいと心の底から思うメンバーを集めています。
一般公募をしているとよくある参加志望の動機としては「参加費が高いので運営チームでも良いので参加したい」とか「登壇者の話が聞きたい」「人脈を作りたい」というものです。やはり、「なぜICCカンファレンスの運営チームメンバーとして一緒にやりたいか?」という動機を重視しています。
今回のICCカンファレンスの運営チームの主力メンバーはIVSのときの運営チームメンバーとして一緒に頑張ってくれたメンバーも多く集まっています。これは僕とまた一緒に仕事したいということもありますが、やはりICCの実現したコンセプトへのコミットメントを感じます。IVSのときもボランティア・チームであるため私が新しくICCカンファレンスをスタートしたといったところで実績もないICCカンファレンスの運営チームとしてサポートする義理はないと思うのですが、主力メンバーだった方々が支えてくれるのはとても感謝しております。強い絆をもった素晴らしいチームによってICCカンファレンスは運営されています。
運営チームメンバーの「成長機会」を提供する
私の運営チームのマネジメントの基本的な考え方は「従業員満足度(ES)が顧客満足度(CS)向上につながる」というサービス・マネジメントの原則の考え方を採用しています。 運営チームメンバーの一緒に働いたときの満足度をとても大切にしています。
ICCカンファレンスは成長企業の経営者・幹部が80名程度登壇するようなカンファレンスのため、運営チームメンバーも「自分も起業したい」とか「成功したい」といった成長意欲あふれるメンバーが集まります。 高い成長意欲を持つメンバーの「満足」とは何か? それは「成長機会」を提供することです。
成長機会とは何か具体的なことは ①セッション(プログラム)を聞いて学ぶこと。② 通常の参加者とスタッフの垣根をなくし、交流する機会をつくること。 ③スタッフのコミュニティを作り相互から学び、刺激を受けること。 この3つをとても大切にしています。
①の「セッション(プログラム)を聞いて学ぶこと」というのは通常の参加者と同様にセッションを聞いて学ぶことがdけいるという機会を提供します。もちろんスタッフ業務をするのでA会場担当であればA会場のセッションしか聞くことができない など制約はありますが、参加者同様に聞くことができる。受付のような会場の外にいるメンバーはシフト制にしてセッションを聞く時間を必ず作るようにする。 できるだけプログラムに参加できるようにすることで学ぶ機会を作ることもできますし、さらにはICCカンファレンスをより良い場にしようというコミットメントが高まります。 自分が素晴らしいと思った場をさらに素晴らしい場にしたいと思うようになってほしいという想いがあります。
②の「通常の参加者とスタッフの垣根をなくし、交流する機会をつくること」は、IVSのときもそうですがスタッフが通常の参加者と同じパーティに参加することができるというものです。参加者の方もボランティアスタッフに声をかけてくれたりする。このような機会は刺激になる。 一般的に「スタッフ」というと参加者と普通に話すのは難しいです。私の考え方は「運営チームのコミュニティの一員である」という考え方から通常の参加者とスタッフの垣根をなくし、フラットな関係を作ることを心がけています。 IVSのときも「なんで、スタッフがビールを飲んでいるのだ」というようなお叱りを頂くこおがありますが、私から「運営チームはコミュニティの一員であり、参加者と同じだ」という回答します。
IVSのときも運営チームメンバーから素晴らしい起業家が生まれました。例えばウォンテッドリーの仲さんやAnePerkの福山太郎さんなどです。仲さんは当時は海外ゲストの担当をするスタッフ業務をしていたのですが通常の参加者であるFacebook児玉太郎さん(当時)と面識ができ、Facebookの東京オフィスで働くようになりました。その後に起業です。そのストーリーはこちらを御覧ください。福山太郎さんはサンフランシスコで活躍する日本人起業家です。ぜひこのインタビューを一読ください。
運営チームメンバーは起業家の卵であり、このような接する機会によって人生が大きく変わります。このような機会を作ることは社会に役立つ人材を育成・発掘することにつながるのです。
③のスタッフのコミュニティ作りもとても重要です。同年代のメンバー同士が切磋琢磨する環境を作ることが重要になります。多様なバックグラウンドのメンバーを集めることなど運営チームの採用の段階で気をつけています。大学生のスタッフであれば同じ大学生なのにこんな凄い人がいるということは刺激になります。そんなメンバーを常に探し続けることが私の重要な仕事です。 開催前にはキックオフ・パーティのような飲み会があるとか、開催後は打ち上げがある。さらに幹部メンバーになると定期的に勉強会をしたり集まる機会を作るように工夫しています。私が主催する飲み会や勉強会以外にもメンバー自主的に飲み会を開催するなどしています。 会社の枠を超えた「つながり」がある。それがスタッフのコミュニティです。
ボランティアチームを支える運営手法
ボランティア・チームで運営するというのは心配なことが多いと思います。ICCカンファレンスの場合は私がしっかり運営マニュアルも含めすべて詳細に作りこみます。 ラグビーワールドカップの日本代表のヘッドコーチ(HC)だったエディ・ジョーンズ氏に関する書籍をいろいろ読んだのですが、緻密に計算した練習プランがありました。私の運営チームのマネジメントはオールブラックスのようなチーム作りです。 素晴らしいメンバーを集め、運営方法も素晴らしいメンバーから評価されるような方法論を作ることです。
私の運営方法は詳細な運営マニュアルを作成し、ボランティア・メンバーの方は前日の準備から参加するだけでした。つまり事前の打ち合わせはなく、運営マニュアルを読んで本番に挑みます。運営のミスらしいミスはほとんどなく、運営することができたのはしっかり準備をすることに尽きます。 私自身が会場の配置や設備など熟知することでカンファレンスの運営のデザインをする。誰でも具体的に実行可能な内容にする。
なぜここまでやるのか? それは開催当日の運営は僕1人では運営できないからです。当然なのですが受付から会場運営まで1人で運営はできません。いろいろなメンバーの協力ではじめて開催できます。それもボランティアのスタッフですから僕が本気でやらないと誰がやるのか? と思っています。
私が本気で準備し、コミットメントをすることで運営チームメンバーもはじめて素晴らしい仕事ができるようになります。ICCカンファレンスにおいても当日スタッフが「何かやることはないか?」と暇になるくらい準備をする。成長機会を提供するわけですから、暇な時間ができていろいろな人と交流したほうが良いわけです。時間があればスタッフをスピーカーの方などに紹介したりしています。
運営チームの組織開発
運営チームの配置は人材育成においてとても重要になります。これは通常の企業と同じなのですが運営メンバーがどのように成長してほしいか?を考えて配置します。メンバーとはいろいろと話すのですが会話を通じてどのように考えているのか理解し、実際に配置に活かしていきます。
運営チームの組織はチーム単位で行動します。受付チームやスピーカー誘導チームといったような「機能別」の組織になっています。チームの名称も誰もが理解できるように「受付」とか「スピーカー誘導」「マイク(質疑応答担当)」などの名前にします。チームは4名程度のチームにして運営します。
チーム単位に仕事があるのはボランティアチームだとどうしても病気で欠席などの欠席のリスクがあるためです。個人に仕事を割り振るのは極力さけ、チーム単位で仕事をする。チーム内の仕事の分担はチームリーダーが決めるというものです。 チームリーダーには経験を積んだスタッフを配置します。新しく入るメンバーと経験を持ったメンバーが一緒に動くことで新人は運営方法を学び、リーダーは人をマネジメントをすることを学びます。
リーダーの担当はできるだけ固定化しないようにします。受付リーダーだった方は今回は会場の運営リーダーをやろう とかできるだけ配置転換をすることでいろいろな仕事を学び、いろいろな人と一緒に仕事するようになります。どの仕事もそれほど難しい仕事ではないため、運営マニュアルさえしっかりしていれば誰もが真面目に取り組めばできるようになります。
リーダークラスが複数の業務を経験することで運営チームはレベルアップしますし、マンネリ化せずに新しい成長機会を得ることができるように工夫しています。開催後はリーダークラスから各メンバーの働きぶりのフィードバックがあります。「次回はリーダーとして活躍できる」などのフィードバックがあり、その結果を次の開催につなげていきます。ボランティアチームにも人事評価があるわけです。このフィードバックは実に的確なフィードバックが戻ってきます。
運営チームの継続性
ボランティアチームの場合はメンバーは必ず入れ替わります。予定が合わないこともあるし、スタッフを「卒業する」ということがあります。これはボランティアチームの宿命であるのですが、人材が排出されることは素晴らしいことだと思っており、入れ替わりは新しいメンバーを追加できる大きなチャンスと考えています。
チームマネジメントで重要になるのは参加の継続性です。リテンションがとても重要になります。そこで「従業員満足度(ES)」が重要になるわけです。運営スタッフがそれぞれ成長機会があるし、楽しいと思うような場であれば継続して参加したいと思うし、さらにはリーダーとなって同じような成長機会を得てほしいと還元したいと思うようになります。スタッフのコミュニティが重要になるのは参加の継続性を高める上でもとても重要なのです。
重要なKPIとしてはNPSが有効です。 友人・知人にスタッフ業務を薦めるか?という10段階の評価でどのような数値をつけるのか?
10~9:推奨する立場(プロモーター)
8~7:推奨も批判もしない受動的な立場
6~0:批判的な立場
推奨者の割合 - 批判者の割合 = 推奨者の正味スコア
となる。一般的な マイナスになるほうが多い。 例えば、ICCカンファレンスに運営チームとして参加して最高だった! 友人・知人に絶対に薦めたい!と思えば「10」になる。仮にその本人がスケジュールの関係で欠席になった場合においても知人・友人に対してポジティブに伝えることになり、それが新しい応募につながります。
運営メンバーがプロモーターになる
私のIVS運営の最後はIVS 2015 Spring (宮崎開催)でした。その時に収録したスタッフドキュメンタリーをご覧いただければ。 毎回 運営チームメンバーが出演する「スタッフドキュメンタリー」の動画を収録していました。これは一般の企業では採用のための動画です。 スタッフドキュメンタリーは動画を見た方がスタッフをしてみたい!と思うような採用を目的とする動画ではありますが、私の思いとしては今まで多大な貢献をしてくれたメンバーを紹介したいというものです。毎回4-5名 スタッフの中から選出し、テーマを決めて収録していました。
IVS 2015 Spring スタッフドキュメンタリー from Infinity Ventures Summit on Vimeo.
運営スタッフの仕事はテキストを読んでいてもイメージが付きにくいため、このような動画はとても効果的です。採用のための動画を作ることはとても重要だと思っております。 毎回 ワンダーグラフィックスさんにお願いしており、ボランティアチームと一体となって仕事をしていたこともあり、スタッフドキュメンタリーは現場を深く理解して上でしっかり撮影いただいておりました。 ICCカンファレンスにおいてもワンダーグラフィックスさんと一緒にまたゼロからスタッフドキュメンタリーを作っていきたいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。ICCカンファレンスでは運営チームメンバーを募集しております! こちらの応募フォームからぜひ応募いただければ。 2016年 ICCカンファレンスが新しくスタートします。開催実績も知名度もまったくありません。その中でも多くの登壇者の方に登壇いただけることになりましたし、運営チームも素晴らしいメンバーに恵まれています。より素晴らしい場にしていくことが私の重要な仕事であり、そのために自分の考え方をブログに書こうと思い、この長文のブログになりました。 運営チームとして参加すれば必ず成長し、素晴らしい仲間が見つかります。平日開催ということで会社を休むことができない・・・・ そんな場合は面識のある経営者であれば僕から連絡して説得します。 素晴らしいスタッフメンバーが集まれば本当に素晴らしいカンファレンスになります。ぜひ一緒に創りあげるメンバーを募集しております。 よろしくお願いします!