ICCカンファレンスなど私が企画・運営しているカンファレンスでは「神が細部に宿る」という褒め言葉を頂くことがあります。
企画・運営をされている方はこの言葉で評価されることは本当に嬉しいのではないでしょうか。
私は別に「神は細部に宿る」ということを意識して細かい仕事をしているわけではなく、あくまでICCという「産業を共に創る」というコンセプトを実現するために質の高いコミュニティ運営をする。質の高いコミュニティ運営とを何か?と突き詰めて仕事をしているだけです。誰かに見てもらうために仕事をしているわけでもなく、評価されるためにやっているわけではない。単純に「やりたい」「実現したい」ことだからです。
ICC TOKYO 2016の会場のセッティングは登壇者と参加者の距離が近く、フラットになるような設定をしました。人数は50〜100名程度となる質の高い議論となりました。写真を見るとわかりますが、登壇者と質問者が2メートルも離れていない。できるだけ距離を近くするというのがICCカンファレンスの基本デザインとなっています。
これは「産業を共に創る」ということはどういうことか?を考えた結果です。実現したコンセプトがあり、具体化する方法をひたすら考えるということが重要です。
「産業を共に創る」ということは経営者・幹部の同士の真剣の議論の場をつくり、その内容を共有することが重要と考えました。その結果、4会場同時進行のプログラムとなりましたし、さらには小会議室では動画インタビュー用の対談もありました。 原則すべてのセッションは書き起しを行い、共有することで産業の発展に貢献するというのがICCのビジョンです。できるだけ多くのセッションを実現するため4会場同時進行を1日とか2日間行うというデザインにしている。
運営の難易度は非常に難しくなるのですが、スピーカー誘導の方法をボランティア・スタッフで運営する方法を1週間くらい缶詰になって考えました。11年間やってきた方法を捨てて新しい方法を開発しました。1日90名の登壇者を10名程度のスタッフで定時にスタートするための誘導を行うというものですが新しい取り組みを複数組み合わせトラブルがないという成果を達成しました。
このようなことをしていると「神は細部に宿る」というような褒め言葉を頂くようになる。接している方すると「細部」なのですが、私からすると非常に重要なことであり、「細部」ではないわけです。新しいスピーカー誘導の方法は最新の技術を一切使わない極めてアナログな方法を利用しました。
運営方法がコンセプトに基づき考えられているため、実際の参加者の「顧客体験」は一貫したものとなります。運営に「軸」があると心地よさを感じるわけです。これは「ブランディング」手法の「顧客接点において体験の一貫性」です。 ICCというコンセプトは単に言っているだけではなく、プログラムの企画から運営まで一貫したポリシーのもので運営されているということを体験するわけです。
「カスタマー・ジャーニー」などの分析手法がありますが、同様の考え方をICCの企画・運営において行っています。
通常の参加者に対してはもちろんですが、ICCカンファレンスの場合は運営チームにできるだけ負荷をかけないようなオペレーションをしています。上記のスピーカー誘導の方法はスピーカー誘導スタッフにスピーカーのすべての名前を覚えて、集合時間を暗記しろ というような無理難題を出しているわけではありません。 スピーカーのIDカードに集合時間を記載したり、誘導看板を用意するなどして非常に簡単な方法で効率よく誘導ができるような仕組みになっています。体調不良で欠員がでたのですが他のチームからスライドしたスタッフがそのまま活躍できるのは運営の準備があってこそです。
誰もが快適に過ごすことができるように最大限努力しています。 このようなことが良質なコミュニティ形成につながる。 コミュニティは強いパワーを生みます。しかしながら、良質のコミュニティを創るのは簡単なことではない。 適当にやるとすぐに崩壊するが、創るのは辛抱強く取り組む必要がある。
例えば「ベンチャー企業のためのエコシステムが重要だ」とか「イノベーションのエコシステムが重要だ」というような重要性を指摘する人は非常に多いし、実際にお金を出す人も多いのですが、実際に手を動かして徹底して実践する人はほとんどいない。「面倒」な「作業」なんてやっている場合ではないというこでやらないのです。
オリンピック選手が日々努力するような努力をコツコツと行っていけば必ず成果としてでてきます。 我が社から「イノベーション」が生まれないという嘆く経営者は多いですが、その努力をしているのか? という点です。 こんなことを大手企業の経営者に言う人はまずいないでしょう。
コミュニティ作りは丁寧な仕事をしっかり積み重ねていくだけです。難しい仕事ではないのですが、成果が見えにくいため、評価されないとモチベーションがでないようなマインドセットの方だと難しいわけです。
日々の運営の方法やコミュニティのデザインに関する方法論をしっかりまとめていこうと思っています。