2007年2月3日現在 時価総額2000億円を超えるDeNA 。先日 平成19年3月期 第3四半期決算説明会(資料)があった。同社のIR資料などを基にビジネスモデルの特徴など 強さを分析する。
まずDeNAの事業内容は以下の通り。Webコマース事業(オークションやショッピング)から始まり、モバイル事業に展開した会社である。
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事業内容(DeNA社 ウェブサイトより)
以下ポインをまとめる。
1 素晴らしい業績を支えるのはモバイル事業の躍進
DeNA社の業績推移(売上高・経常利益)を見てほしい、今期2007年3月期(2006年度)は
売上高128億円、経常利益37.5億円に達する見込みだ。当初Webのオークション事業から始まり、「モバオク」などのモバイル事業に展開し、インターネット業界を代表する企業に躍進した。M&Aも行っているが、主力事業は自社開発だ。
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売上高・経常利益の推移
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まず4半期ごとのセグメント別売上高の推移の表を見る。
モバイル事業の成長がDeNAの成長のドライバーである。
Webコマース事業の業績も 「モバイル分野が売上の主軸に成長-ポケットビッダーズ、au Shopping
Mallの取扱高が大幅に拡大-特にau Shopping
Mallがプロモーション強化の効果もあり好調に推移」とあり、Webコマース事業といっても、「モバイル」コマースが主流になっており、セグメント情報
の「モバイル」とWebコマース のモバイルコマースを合算すると相当大きい数字になっている。
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4半期ベースのセグメント別(事業別)売上高推移
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2 モバゲータウンがモバイル事業の主力に成長
DeNAのモバイル事業の売上構成が2006年10-12月で大きく変わった点に注目している。
セツメント別売上高の「連結・部門内消去」が見えにくくしているが、モバゲータウンの売上高がモバイル事業の中で一番大きくなった(と思われる)。
「ポケットアフィリエイト(成果報酬型広告ネットワーク)の売上高の約半分がDeNA社の自社メディアの広告である点(自社メディアのモバゲータウンから
の売上高が大半を占めると推定している)を考慮すると、モバゲータウンが810百万円、他社メディアの広告が716百万円、モバオクが664百万円だ。
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3 モバゲータウンの急成長を支える強固なビジネスモデル
DeNA社のモバイル事業の成長ドライバーはモバゲータウンだ。売上高の伸びは素晴らしい。4半期単位で「倍」になっている。1日あたりのページビューはミクシィのモバイルの2倍の2億ベージビューを達成した、そして会員数も300万人突破した
というニュースもあった。
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モバゲータウンは無料のゲームサイト+SNS機能を持つサービスである。 ビジネスモデルのポイントは①高品質の無料ゲームをフックにした集客、②
ページビューを稼ぐSNS、③ページビューを利益に変える成果報酬型広告 である。 「モバゴールド」というポイントがあり、アバターなどの購入に利用で
きる。「モバゴールド」を獲得するためには新規ユーザーを紹介する(=ユーザー増加を促進)、そして成果報酬型広告とモバーゴールドが連携(モバゴールド
がもらえる)している。 「モバゴールド」を活用したユーザーに対するインセンティブスキームがある点が重要なポイントである。
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4 モバゲータウンの急成長で影隠れるポケットアフィリエイトとモバオクの構造変化
2006年10-12月の売上高の構造変化に注目すべき点はモバゲータウンだけではない。
ひとつ目は成果報酬型広告ネットワークの「ポケットアフィリエイト」の売上構造の変化だ。
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下の表はポケットアフィリエイトの売上高推移と自社メディアと他社メディアの比率だ。 3Qで他社メディア向けのポケットア
フィリエイト事業が初の減収である。
2つ目のポイントは自社メディアの成長です。自社メディアというのは「モバーゲタウン」経由のものがほとんどと推定されます。 ポケットアフィリエイト全
体の広告収入は成長しており、強固な基盤である。 そして、自社メディア(モバゲータウン)のほうが利益率が高いと推定でき、広告費のアロケーションを自
社メディアに優先的に配分しているのではないか?
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ポケットアフィリエイトの売上構造の変化に加え、「モバオク」の売上高の伸び悩みだ。過去のIR資料を見るとモ
バオクの事業の売上推移は 1Q584百万円、2Qの売上高は599百万円、そして3Qは664百万円と微増といってよい推移となっている。
実際 第3 4半期の資料(モバオクの重要指標の推移)を見ると、有料会員数は増えているものの、期末出品数は横ばいややや減少となっている。
2006年3Qの売上高は取扱高が多く伸びたこともあり、伸びた ということですが、その結果、出品数が減ったという見方でしょうか。 期末出品数(在
庫)→取扱高(取引) →売上高(手数料)という指標の見方だ。
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5 送客プラットフォームの変化
2006年第一四半期のIR資料の「携帯サービスを成功に導くDeNAの強み」は以下のとおり。ポケットアフィリエイトなど集客力が強みとなっているとあった。
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2006年第3四半期のIR資料で
はモバゲータウンが送客プラットフォームということになっている。つまり、第一四半期ではポケットアフィリエイトなどがモバゲータウンへの集客に貢献して
いたが、現在はモバゲータウンが他の送客力の源泉になっている。 さらに強化する戦略がモバゲータウンのポータル化である。
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6 モバゲータウンのポータル化への道
今度のDeNA社の戦略はモバゲータウンのポータル化である。最近、300万ユーザー突破のアナウントとTVCMを行うという発表があった。
ライバル企業を突き放し、Webの世界におけるヤフーのようなポジションを確立を目指している。 Webのオークション事業ではヤフーや楽天の勝てなかっ
た。理由は楽天やヤフーの総合力の強さである。楽天はショッピングポールやインフォシークのような検索・ポータルサービスなど。ヤフーは強固なポータルの
集客力を生かした事業の多角化。 Webの世界ではDeNAのオークション事業単体では難しかった。
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集客力のあるモバゲータウンに情報系コンテンツやEC系との連携を強化する方向性は正しい。 モバイルにおける「ヤフー」になるだろう。 特に「勝手サイト」であることがポイントだ。キャリアの意向に左右されない。
一方、モバオクが微増、ポケットアフィリエイトの成長もモバゲータウン経由が成長の源泉となっているため、いかにモバゲータウンの成長力・競
争力を維持・強化するかが重要な経営課題だ。 また、Web世界ではGoogleのような検索サービスが強い。DeNAとしてはモバイル検索をどうする
か?という点が「ポータル戦略」の重要課題だろう。
若者は飽きっぽいということで、モバゲータウンも飽きてしまって成長が止まるかもしれないし、今後どういうサービスを継続的に投入していくのか?という点が非常に重要だ。
また、収益構造としては、モバゲータウンの収益源はポケットアフィリエイトとモバゴールドを連携した成果報酬広告だ。既に半数は自社メディア向けと
なっており、ポケットアフィリエイトの広告収入が伸びが制約条件になる。 アフィリエイト以外の収益源の多角化 と モバゲータウンに依存した事業構造で
はなく、新規事業とのバランスが重要となるだろう。(実際に新規事業を継続的に投入している。)
今後のモバゲータウンのユーザー数やページビューの伸び、そして収益モデルの多角化をウォッチしたい。