シリコンバレーと日本を比較し、起業家が少ないとか、インフラが弱いとか言われることが多い。
私の考察としては、一番大きなポイントは、ヒューレッドパッカードとか、フェアチャイルドセミコンダクターとかインテルとか、 起業家の源流企業が存在することが大きい。 経営幹部の方などが再度 起業する とか、 ベンチャーキャピタリストに転じるとか、このようなサイクルがあったからこそ、今のような環境になっているのだ。 原因があって結果がある。結果だけ論じても仕方がない。
日本の場合もネット業界では大きな変化が起きている。ネット第一世代の成功 と スピンアウトする経営幹部が増えてきていると思う。 最近、楽天の吉田さんや山田さんといった経営幹部が退任されたが、 次のステップを考えてのことだろう(直接話していないのでわかりませんが・・)。 日本のニュースではどうしても創業期から支えてきた経営幹部が退職することはネガティブに考えがちである。
5-7年と同じことをやっていると次のことをしたくのが人間だろう。ネットベンチャーの世界はドックイヤーといわれる。 1年が7年に相当すると意味では、5-7年働くというのは35年ー49年という普通の会社では定年退職の年である。 まさにセカンドライフ(注:バーチャルワールドのほうではない・・)だ。
源流企業としては、楽天さんやサイバーエジェントさんなどなど、いろいろ存在する。NILSに参加する起業家では、ネット第一世代を源流する起業家は多い。 グリーの田中さんやフォートラベルの津田さんなどは楽天出身だし、 サイバーエージェント出身の起業家は元副社長の早川さんをはじめ、把握するのが難しいほど多い。 (NILSの参加企業リストから経営者のバックグランドを一回調べてみても面白いかもと思う。)
New Industry Leaders Summitを主催していると感じることは、経営者同士の横のつながりが強い。 76世代の記事では、グリーの田中さんとか、はてなの川崎さんとか、学生時代からの知り合いといったことがあるが、有名な起業家だけではなく、 よこのつながりが強くなっている世代だ。
起業する際には、①いっしょに起業する仲間がいるか? ②お金をどう集めるか? といったところが大きな課題が、 ①の面では仲間はいる。 ②のお金の面はIPOなどを経験している人だれば数千万円の起業資金は用意できる。 ベンチャーキャピタルはシードステージに投資する会社は少ないが、一回事業がスタートした段階であれば投資するといった会社は多くなったと感じる。
今まで、日本の場合は、大企業に就職するというのが常識だった。 大企業とベンチャーの距離感が問題視されていたが、もともと就職するときからマインドが異なるのだから、そんなことをいっても仕方がないだろう と思う。
重要なのは起業家主導の経済圏をつくることだと思う。 起業家が起業家を生む。 起業するしても、突然 起業しようと思うのではなく、 起業家の話を聞いて感動した とか、父親が事業をやっていた といった何かに影響さえて動くものだ。
起業家主導の経済圏を拡大するには、相互に学んだり、ビジネスをするといったことが重要だ。 NILSは重要な役割は相互に学び、ビジネスにつなげる場であることだ。 1年前と比べると、イベントや交流会など活発になってきたと感じる。 良いサイクルが回っているのである。 新興市場の株価は低迷しているが、底力が増えている。
あえて課題をあげるとすると、日本の場合は安易なIPOが多いということだ。 個人的にはM&Aが活発化しないといけないと考えている。私の投資先のインタースコープ社は創業者が株式を売却した。売却して引退したわけではなく、次の事業を行っているのだ。
日本にはタブついているお金が多すぎる。 IPOした場合、社長が突然引退するといったことは「無責任だー」といったことになる。 シリコンバレーの場合、創業者はVCなどから資金調達した段階でCEOを退任し、プロの経営者になったりする。 役割分担がされているといえばいえるが、 実際のところ、 CEOでないほうが退任しやすすいし、持株も比率が低いほうが売却しやすい。
もちろん、IPO後 成長をつづけ、ビジョナリーカンパニーを目指すことを否定しているわけではなく、 すべてはビジョナリーカンパニーになるわけではない。
株(資金)と人(創業者・経営幹部)の2つの流動化のサイクルを5年くらいでまわしていくことで、新しい産業に「血」が還流すれば、さらに発展するに違いない。
循環する率は、「複利」で考えることができる。 72の法則で考えると簡単だ。
72÷利率=2倍になる年数 という近似式がある。 利率6%だとすると、2倍になるのは12年かかる。 18%だとすると、2倍になるのは3年だ。
経済全体から考えると、流動化が進むほうが発展する。 一方、創業者は創業者で事業のこだわりだったり、オーナーシップへのこだわりがある。 オーナーシップにこだわると、資金調達金額も希薄化を恐れるあまり、少ない金額しか調達しなかったり、企業規模大きくなり、時価総額が高くなってから資金調達するといったスピードが遅い展開になりがちだ。
経済全体から見ると、前者の流動化したほうがよいという判断になるのではないかと考えている。 シリコンバレーがここまで成長したのは、日本と異なり、この「複利」の成長サイクルの差であるといえる。
と、最近 NILSの企画をしながら、もっと活性化する方法はないか?とか考えています。