日興コーディアルの不正会計に関する特別調査レポートを読んでいるが、なかなか凄い。
SPCを連結しない という所与の条件から、NPI(日興プリンシパル) とNPIH(ベルシステム24を保有するSPC)の間のEB債 を利用し、利益を不正に操作した というものである。
SPCを連結するかしないか?という会計方針で議論はあると思うが、 EB債をバックデートを発行する、つまり儲かるとわかった段階で遡った日付で発行するというものである。もっとわかりやすく書くと、9月の段階で1万円の株価になったものを8月の段階で8000円で買ったことにするというものだ。 NPIHを連結にした場合は相対取引のため相殺されるが、連結しなかったため、巨額な利益が計上された。
また、調査委員会の結果では、本件だけでなく、他の案件(タワーレコードや日興アセット)でも同じなような議論が行われていたことがわかっている。
NPIの投資関係者に支払われた業績賞与は6名で3億4100万円(支給額のレンジは3000万円から1.2億円)になっているということだ。 投資を実行した段階で多額の報酬を得る
ことができるインセンティブスキームだ。
構図としては、ライブドア事件と日興コーディアル事件?も同じようなものではないか?と 感じる。 買収した段階で多額の利益を計上しているという点である。
- 日興コーディアルの場合は、EB債を利用し、ベルシステム24の株価の値上がりがわかった段階(TOB発表)で、バックデートして発行した。
- ライブドアの場合は、ファンドで現金買収を行い、その後、株式交換を発表し、株価があがった段階で、自社株を保有するファンドの持分を売却し、利益計上を行った。また、広告宣伝費などの名目でライブドア社に利益の付け替えを行った。
両方ともTOBをする(プレミアムをつけた買収をするため株価が上がる)と株式交換の買収(株価の上がるイベントだった)といったことに目をつけている。 自社株をファンド通じて取引するのも EB債 を活用するのもどちらも利益計上の方法の違いだ。 また、EB債は評価益という形で、ライブドアの場合はファンドの自社株売却益+利益の付け替えといったところだが、操作している点では同じ次元の話だと思う。
単純にライブドアの買収案件にもEB債を活用することがだきただろう。 罰金と辞任 と 逮捕で裁判中 違いはなんだろうか?
また、インセンティブスキームも類似しているように感じる。NPIの当事者6名に支払われた賞与は高い金額だ。同様にライブドアの場合は宮内被告などが不正に資金(賞与みたなものか?)を得ていたことがわかっている。 「多額の利益計上」 と 「多額の賞与」という点を数名で実行できるという点がポイントだろう。
日興コーディアルの場合は大手証券会社でけにスマートな方法だ。 また、担当していた人たちも犯罪行為と思ってやっていことではない(今のところ犯罪ではない不正行為)と思われる。 実際に名前が出てくる人にあったことがあったりするが、しっかりした人だったと思う。
買収時点で多額の利益を得る、担当者も利益を得るといった構図が問題ように感じる。
事業会社にしろ、ファンドにしろ どこかの会社を買収するのは買収した後の事業シナジーなど数年先から長期の視点での買収だ。 連結の利益だったり、キャピタルゲイン(売却益)の貢献は未来の話だ。
不正会計 と 犯罪行為との違いは何なのか? よくわからない。これも問題だろう。
(注)
EB債(他社株転換債 Exchangeable Bond) とは何か?
債券の償還の方法を決定するために、あらかじめ定められた日において、所定の条件を満たす場合には、現金で償還されるのではなく、所定の銘柄の株券で償還される条項が付された債券のことをいう。
他社とは、債券の発行体と償還対象株式の発行会社とが異なることに由来する。他社株償還条項付債には、いくつか種類があり、ノックインプット売り型やノックアウトプット売り型などがある。